ハワイの大注目アートイベント「ハワイ・ウォールズ(Hawaii Walls) 」とは?|参加アーティスト&主催者へのインタビューで最新情報を紹介します!
- Ryo Ito
- 10月10日
- 読了時間: 18分
更新日:10月24日

「ハワイ・ウォールズ(Hawaii Walls)」、かつて「パウ・ワウ・ハワイ(POW! WOW! HAWAII)」と呼ばれていたこのアートの祭典は、多彩なアーティストたちによる壁画制作によって、ハワイの地域コミュニティにポジティブなインパクトをもたらそうというプロジェクトです。
プロジェクトを主催する非営利団体「ワールド・ワイド・ウォールズ」は、2009年、ハワイ出身のアーティスト、ジャスパー・ウォンにより、香港で創設されました。2010年にハワイ州ホノルル市(オアフ島)で第1回目となるフェスティバルを開催して以来、同様のイベントを市内で15年間に渡って開催し続けています。
組織名に“ワールド・ワイド”とある通り、ワールド・ワイド・ウォールズ主催のこのイベントはやがて、ハワイ以外でも開かれるようになりました。そしていまや、北米、アジア、ヨーロッパ、そして太平洋地域の20を超える都市で、その公共空間に屋外壁画ギャラリーを作り出すまでに規模を拡大させています。

さて、ホノルル市内でのハワイ・ウォールズの成果については、アラモアナ地区の西隣にあるカカアコ地区の壁画群が良く知られています。工場や倉庫が数多く立ち並んでいたカカアコの無機質な灰色の風景は、独創的な壁画作品の数々によってカラフルに彩られることになりました。
そして、それまでは地域住民か、そこで働く人のためのエリアに過ぎなかったカカアコは、壁画見物に訪れる地元ハワイの人々や観光客によって賑わう注目スポットへと一気に変貌を遂げます。それに応じてこの地域にはレストランやカフェ、各種ショップなどが次々と作られ、以前とは一線を画す、新たな息吹をたたえた地域へと生まれ変わったのです。

さらに2023年からハワイ・ウォールズは、その開催地を、それまで10年以上イベントが行われききた「カカアコ地区からさらに西へ移動。ビジネスや政治の中心地「ダウンタウン」や中国系移民が築き上げた「チャイナタウン」を越えた先のカリヒ・パラマ地区(※)で開催されるようになりました。この移転の理由について、ワールド・ワイド・ウォールズは次のように説明しています。
※カリヒ・パラマ地区:ワイキキ中心部から車で20分、ダニエル・K・イノウエ国際空港からは車で10分のローカルタウン。付近には「リリハベーカリー(本店)」や「ライオン・コーヒー/カフェ&ジェネラルストア」、「ビショップ博物館」などがある。
「カリヒ・パラマ地区は、豊かな文化と活気あるコミュニティを持つにもかかわらず、社会経済的な資源と機会の面で恵まれない地域であり続けてきました。同地域はオアフ島の他の地域と比べて働く場所が少なく貧困率が高い上、質の高い教育や医療や受けられる機会、公共交通機関や公共図書館を始めとするインフラやサービスが不足しています。加えて、犯罪率が高く、安全面の問題も抱えたエリアです。これらの課題に対処するため、ハワイ・ウォールズはイベントを通じて地域経済の発展を促し、同時に行われるワークショップ等によって地域への教育投資を行います。この地域資源の強化と活性化に貢献し、一帯の住民に成功の機会と、より良い生活の質を提供したいと考えています」

この記事を書いている2025年秋、ハワイ・ウォールズは9月16日~21日の日程で、カリヒにあるファーリントン高校を会場に開催されました。ファーリントン高校(※)は2023年にフェスティバルが同地区で初開催されて以来、3年連続で会場に選ばれており、今回また新たに、50以上の壁画がその校舎の壁などに描かれることとなりました。
※ファーリントン高校:1936年に設立された、歴史ある公立高校。2300人以上の生徒を抱え、現在、ハワイ州内で最も生徒数が多い公立学校である。

2025年のハワイ・ウォールズが無事に終了を迎えた9月末、私は今年の壁画制作に参加した2人のアーティストに話を伺うことができました。1人目は、ハワイらしいモチーフをポップかつキュートに表現したイラスト作品で知られるケルシー・デイナです。
◆【インタビュー】ハワイの歴史と文化への愛を楽しく表現!
――ケルシー・デイナ(アーティスト)

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ケルシー・デイナ/Kelsie Dayna
ホノルルを拠点とするイラストレーター兼アーティスト。生まれ育った地元オアフ島の環境に大きな影響を受けて生み出される作品を通じて退屈な日常に楽しさと笑顔をもたらすことを目指し、日々制作を行っている。
Website:https://www.kelsiedayna.com/
Instagram:https://www.instagram.com/kelsiedayna/
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アロハ・セイルズ・ハワイ(以下、アロハ):
お久しぶりです。今年8月に、テレビドラマシリーズ「チーフ・オブ・ウォー」の配信が始まったよね。このドラマではハワイの古代史にフォーカスが当てられているけれど、番組を見た僕自身、ちょうど、ハワイがアメリカ合衆国の州となる前のハワイ王国時代に興味をそそられていたところだったんだ。
誰もが親しみのあるトランプのカードを使ってハワイの王族たちの肖像画を描くという今回の壁画制作のアイデアはどのようにして生まれたの?
ケルシー・デイナ(以下、ケルシー):
伝統的なアイテムであるトランプを使って、ハワイ王朝の重要人物をモチーフにした楽しいデザインにしたいと思ったの。描いたのは、初代カメハメハ1世(左)、王朝唯一の女性首長・リリウオカラニ女王(中央)、そして一時期ハワイでは禁じられていた「フラ」を復活させ、「メリー・モナーク(陽気な王)」の愛称で呼ばれた第5代デイヴィッド・カラカウア王(右)よ。
彼らにはそれぞれを象徴するアイテムを持たせ、カメハメハ王はハワイ諸島統一のために戦ったことをシンボリックに表す槍を、リリウオカラニ女王は「王冠の花(彼女のお気に入りの花と言われているクラウンフラワー)」を、カラカウア王は彼の音楽と芸術への愛を象徴するイプ(ヒョウタンから作られる、古典フラ用の楽器)をそれぞれ手にしているの。

アロハ:
作品を見た多くの人々は、きっと誰もがアメリカ合衆国による統治以前のハワイの歴史や文化について思いを馳せるんじゃないかな。若者たちが学び、成長していく場であるファーリントン高校にこの壁画を描いた意図を聞かせて。
ケルシー:
この壁画はハワイの歴史と文化を称えるものよ。残念ながら、いまのハワイの学校ではハワイの歴史について十分に教えられていないのが現状なのね。だから、この壁画がこの学校の生徒たちにとって素敵な会話のきっかけとなり、少なくとも私たちの故郷であるこの地の豊かな歴史をさりげなく思い出させてくれるものになったらいいと願っているわ。
アロハ:
オレンジ、赤や黄色といった暖色の色彩を使ったのはなぜ?
ケルシー:
古代ハワイの王族がよく身に着けていた色である赤と黄色を組み合わせたのよ。温かく親しみやすい雰囲気の作品にしたかったから、カードの周りをオレンジ色で囲むことにしたわ。
アロハ:
今回のハワイ・ウォールズでの壁画も、あなたらしい楽しい雰囲気で大好きな作品だよ。ハワイの歴史には決して明るいだけではない一面もあるけれど、それも含めてハワイの皆さんのアイデンティティとなる、とても大切なものだと思う。それらに自然と興味を持たせてくれる素晴らしい作品だよね。今日は話を聞かせてくれてどうもありがとう。
ケルシー:
こちらこそ、ありがとう。
さて、2人目のアーティストへのインタビューを紹介するその前に、次にご紹介したいのが、ハワイ・ウォールズを主催する「ワールド・ワイド・ウォールズ」の創設者兼ディレクターであるジャスパー・ウォンへのインタビューです。ジャスパーはこれまでのカリヒ・パラマ地区でのイベントの成果と現状、今後の展望について、極めて率直に明かしてくれました。
◆【インタビュー】ハワイ・ウォールズの壁画はただ美しいだけじゃだめなんだ―――ジャスパー・ウォン(「ハワイ・ウォールズ」ディレクター)

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ジャスパー・ウォン/Jasper Wong
ホノルル出身のアーティスト・イラストレーター、キュレーター。アジア、ヨーロッパ、アメリカなど世界各地で展覧会を開催。香港のギャラリー「ABOVE SECOND」の創設者として知られる他、自身が創設したワールド・ワイド・ウォールズではディレクターを務めている。
Website: https://jasperwong.net/
Instagram:https://www.instagram.com/mrjasperwong/
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アロハ・セイルズ・ハワイ(以下、アロハ):
初めまして。今日はこのような機会をありがとう。早速インタビューを始めさせてもらうね。壁画の制作が始まる前に、「クアロア・ランチ」でアーティストたちが参加するツアーを行ったよね。このツアーは何のために開催したのものなのかな?

ジャスパー・ウォン(以下、ジャスパー):
毎年フェスティバルの開催前に文化ツアーを行って、ハワイの歴史、伝統、そして価値観を参加アーティストの皆と共有してるんだ。私たちにとって壁画制作は、単に絵を描くだけではなく、アーティストと制作現場である土地との間に意味のある繋がりを築くことだから。参加してくれるアーティストの中には初めてハワイを訪れる人が少なくないから、ハワイの文化的な背景を理解し、そこに住む人々と交流を持つことが重要だと考えているんだよ。
そして、クアロア・ランチは私たちの長年のパートナーであり、これまで我々を温かく迎えてきてくれた。ここは世界的に有名な映画撮影地や観光スポットであると同時に、ハワイ島で最も神聖な場所の一つでもある。フェスティバルを文化的な体験から始めることで、参加者全員が、自分たちが制作する作品が、土地や地域社会と深く結びついた大きな物語の一部であることを意識できるような雰囲気を作り出せるんだよ。
アロハ:
ハワイ・ウォールズがカリヒ・パラマ地区で開催されるのは今年で3回目だけど、今回のフェスティバルではこれまでと違い、壁画の制作場所をファーリントン高校一ヶ所だけに絞ったのはなぜなの?

ジャスパー:
実は今回のこの決定には、資金調達の難しさが大きく影響している。今年は関税引き上げや貿易戦争、連邦政府予算の凍結や削減などによって、支援金の約40%が失われてしまったんだ。
でも、私たちは何としてもこのフェスティバルを開催したいと強く願っていた。そこで、会場を1か所に絞ることで運営や管理が簡単になり、コストを下げながらもイベントの質を維持できると考えたわけなんだ。
また、実は、ファーリントン高校は私にとって特別な場所でもある。私はこの学校の目の前の通りに住んで育った。母が近くで食料品店を経営していて、幼い頃の私はその店で過ごす時間が多く、カリヒの地域コミュニティの中で育ったんだよ。ファーリントン高校に壁画を描くことができたのは、私を育ててくれた地域社会への恩返しのようなものだと感じているよ。
アロハ:
そんな事情があったとは驚いたよ。そして、カリヒ地区があなたの大切なホームタウンであると聞いてなんだか心にジンときたな。
今年はさまざまな困難を乗り越えてのフェスティバル開催だったわけだけど、あなた自身、今回の最大の収穫は何だと考えている?
ジャスパー:
地域に住む人たち、特にファーリントンの生徒や先生たちの反応が見られたことかな。彼らの喜びや感謝の気持ちは、これらの壁画がまさに地域コミュニティに属するものであることを物語っていた。多くの生徒が壁画制作に参加したことで、自分たちのキャンパスに生み出された壁画がまさに自分たちのものであるという意識や誇りを持つことができたと思うよ。
そして、過去3年間で、ファーリントン高校には合計67点の壁画が描かれ、全米の学校の中で最も多くの壁画が展示されている場所の一つとなったけど、この規模は本当に驚くべきものだと思う。

アロハ:
それはとても素晴らしいね。過去2回と比べて、全体的なテーマや参加アーティストたちに何か違いはあった?
ジャスパー:
毎年、参加するアーティストや彼らの作品のテーマは違っているけど、カリヒの地域コミュニティの文化を反映し、地域社会を豊かにするようなアート作品を制作するという、根本的な目標はずっと変わっていないよ。
アロハ:
最後に、来年の開催に向けての課題や計画について教えてほしいな。そして、これまでの計3回のハワイ・ウォールズによって、カリヒ・パラマ地区にどのような好い影響や変化があったんだろう?
ジャスパー:
さっき話したことに繋がるけど、最大の課題は、フェスティバル開催に必要な資金を確保することだね。近年、資金の調達がとても難しくなってきているけど、何としてもこのイベントを続けていきたいと考えているんだ。今年は、日本の白浜とカタールのドーハでもイベントを開催予定だから、今はそちらの準備に集中しているところ。来年のハワイ・ウォールズの内容については未定だけど、白浜とドーハでのイベントが終わり次第、準備を再開する予定さ。
カリヒ・パラマ地区でのフェスティバルに話を戻すと、過去3年間で大きな成果があったと自負している。壁画が学校や地域に新たな活気をもたらしたんだ。世界的なアーティストによる作品によって校内や校庭が彩られ、生徒たちは毎日、素晴らしいアート作品に触れながら生活できるようになった。その結果、多くの生徒が、創造性について新たな視点を持つようになったと感じているよ。
そして、彼らの保護者や教職員、地域住民の皆さんからは、カリヒがこのようにポジティブに表現されていることに誇りを感じているという声も多く寄せられている。このフェスティバルは壁を美しく飾るだけじゃなく、地域コミュニティやそこに住む人々の意識を変えることにも繋がっているんだよ。
最後に、ケルシーと同じハワイ・ウォールズ参加アーティストのひとりであるケイト・ワズワースのインタビューをお届けします。彼女は今回、同じオアフ島出身のイラストレーターであり、「パンキー・アロハ」のアーティスト名で知られるイラストレーターのシャール・ツイアソアとのコラボレーションによる制作を行いました。
◆【インタビュー】ハワイの大地と海、そして女性たちに想いを込めて
――ケイト・ワズワース(アーティスト)

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ケイト・ワズワース/Kate Wadsworth
ハワイ・オアフ島のイラストレーター兼グラフィックデザイナー。自然界にインスパイアされた大胆な配色と誇張されたフォルムによる実験的な制作、また、巧みでありながら意図的な線描によって物語を語る手法を好む。地元ハワイで開催される国際的サーフィン大会やゴルフトーナメント用のポスターをはじめ、国内外のクライアントとの制作実績も多い。
Website:https://www.katewadsworth.com/
Instagram:https://www.instagram.com/wadsworthink/
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アロハ・セイルズ・ハワイ(以下、アロハ):
ハワイ・ウォールズでは、今回のあなたたちのように複数のアーティストが共同で作品制作した例はこれまでもあったのかな?
ケイト・ワズワース(以下、ケイト):
そうね。これまでにも多くのアーティストが1つの壁面に共同で作品を描いてきたわ。私の記憶では、ハワイ・ウォールズ自体、そういったコラボからスタートしたんじゃなかったかしら。
私とシャール(パンキー・アロハ)は以前にも(ハワイ・ウォールズ以外で)コラボレーションしたことがあって、近くにある複数の壁にそれぞれ作品を描いたり、大きな壁面を共同で使って作品制作をしたりしているの。今回は3回目となる共同制作の機会に恵まれたんだけど、彼女と一緒だといつも楽しい時間を過ごせるのよ。

アロハ:
コラボレーションで難しかったことは何かあった?
ケイト:
一つの壁画を共同制作するというのは、互いの意見を調整し、両者が納得できる作品に仕上げるのが難しいという点で、大変な面も確かにあるわ。一方で、互いにアイデアや技術を共有したり、普段は自分の作品に取り入れないような、相手のアーティストが使うモチーフや色使い、テーマなどを取り入れることができる刺激的な制作でもあるの。
幸いにも、私とシャールは以前にもコラボレーションの経験があったから、一緒に作業するのはとても楽だった。二人とも作品に力強い女性像をよく描いていて、色使いも似ているから、それぞれのスタイルをうまく融合させるのはそれほど難しいことではなかったわ。
アロハ:
女性の頭部に山、そして海を組み合わせるというアイデアはどんな風に生まれたの?
ケイト:
二人の人物を半分水中に沈めるというアイデアは、もともと、シャール(パンキー・アロハ)のアイデアだった。彼女は以前から既に、同じような視覚的テーマを自分の作品に取り入れていたのよ。そして私自身についていえば、そのシャールのアイデアを自分の解釈で表現できることにワクワクしたわ。
実は、シャール(パンキー・アロハ)の壁画は当初、水中のあれこれや海の生き物を多用する予定だったの。それとコントラストを出すため、私の作品では「陸」の要素をいくつか加えることしたわけ。
それは「山から海へ」という全体的なテーマとのバランスを取ろうとしたからで、だから私が描いた女性の髪の毛は徐々に山へと変化していっているのよ。
そして最終的に、この壁画の根本になるテーマは、「女性のエンパワーメント(力を与えること)」と、ここハワイでは非常に重要な「陸と海とのつながり」になったわ。
アロハ:
コントラストと言えば、シャール(パンキー・アロハ)さんが描いた右側部分では雲から雨が降っているのに対し、あなたが描い左側部分には入道雲があり、太陽が輝く晴天が描かれているよね。どうしてそんな風にしたの?
ケイト:
シャール(パンキー・アロハ)が雲と雨を描いた理由について、私自身が説明するのは難しいけれど、私たちには二人とも作品の中で描く独自のシンボルや繰り返し使うモチーフがあるの。様式化された雲もそういったもののひとつよ。
とはいえ、改めて考えてみると、ここハワイの天気は予測しにくく、すぐに変わるのね。ある場所では土砂降りの雨が降っていても、ほんの数フィート離れたところではすっかり晴れているなんてこともあるわけ。壁画を描いている間も実際にそういうことが何度かあったから、もしかしたら無意識のうちに、そんな地元の予測しにくい天候パターンを汲み取っていたのかもしれないわ(笑)
アロハ:
ハワイ・ウォールズのディレクターであるジャスパー・ウォンが「このフェスティバルではアーティスト自身とハワイという土地とのつながりがとても大切」と話していたけれど、ハワイならではのそういった気候の表現もあなたたち二人とハワイとの深いつながりを示すものかもしれないね。
そういえば、今回の壁画は少し高い場所に制作されたと思う。その制作条件に対して特に配慮したことや必要だったテクニックはあったのかな?

ケイト:
そうね。この壁には照明器具、パイプ、警報器など、スケッチを描く際に注意しなくちゃいけない固定物がいくつかあったのね。顔などの重要な部分にこれらの物が入ってはダメだから。でも私たちはそれらに上手く対処できたと思うわ。
それから壁の下は芝生で、制作のための足場を設置してもらったんだけど、これには長所と短所が両方あったわね。
まず良かった点は、リフトを扱ったり共有したりする必要がなくて、自由に足場を登ったり歩いたりしながら制作できたこと。
一方で、足場はいままさに描いている場所での作業の妨げになる場合があって、そこを降りて一歩下がったとしても制作箇所の全体像が見えにくいというデメリットがあるのね。でも、ラッキーなことに、壁画の上部が完成した時点でスタッフやボランティアの皆さんが足場を完全撤去してくれたから、残った下半分については、100% 完全に見通せる状態で描くことができたわ。
アロハ:
とはいえ、作業にはかなり大変なこともあったはずだよ。本当にお疲れ様でした。これが最後の質問になるけれど、高校という教育施設の建物に描く壁画ということで何か特別なことはあったのかな?
ケイト:
実際に壁画を描き始める前に、コンセプトスケッチの承認をファーリントン高校の委員会から得る必要があったんだけれど、私たちの作品は一般的にかなり“家族向け”だから、特に問題はなかったわ。
アロハ:
今日は当事者にしかわからないような制作の裏側にをいろいろと教えてくれてありがとう。話を聞かせてもらったおかげで、今後は僕自身、ハワイ・ウォールズの壁画の見え方が確実に変わると思うし、ひとつひとつの作品がより一層魅力的なものに感じられるようになる予感でいっぱいだよ。
ケイト:
こちらこそ、インタビューをありがとう。機会があったらぜひ実物を見に行ってみてね。
この記事で紹介した「ハワイ・ウォールズ」については、私自身、以前から知っていました。カカアコ地区に作品を見に行ったこともあるものの、2023年からの新会場、カリヒ・パラマ地区の壁画は、残念ながら、まだ一度も実物を見たことがありません。
しかし幸運なことに、今回、カリヒ・パラマ地区での壁画制作に実際に参加したアーティストとイベントの主催者にインタビューする機会に恵まれ、彼らの熱い情熱に触れるとともに「ハワイ・ウォールズ」の現状について多くの驚きや発見を得ることができました。
さまざまな事情により、現在、私を含めたハワイ外の人間がこの地を訪れることは決して容易ではありません。しかし、もし近い将来、チャンスがあるなら、ファーリントン高校をはじめカリヒ・パラマのあちこちを彩る数々の壁画をぜひ鑑賞に訪れたいと思います。
素晴らしいお話を聞かせてくださったケルシー・デイナさん、ジャスパー・ウォンさん、ケイト・ワズワースさんには心からお礼を申し上げます。どうもありがとうございました!


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