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  • Ryo Ito

ハワイのアーティストにインタビュー! vol.6/クロエ・セラーク(Chloé Selarque)『クロエが表現するハワイの自然はなぜこんなにも魅力的なの?』

更新日:2023年5月19日



ハワイで活動するアーティストは画家やイラストレーターだけではありません。


今回ご紹介するクロエ・セラーク(Chloé Selarque)は大学で絵画を学びました。しかし、やがて絵以外の表現を模索するようになり、いまではイラストのほかにも、ピンや刺繍といった工芸品やアパレルなど多彩なジャンルの作品を発表しています。



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Chloé Selarque(クロエ・セラーク)

スイスに生まれ、ハワイ州オアフ島・カネオヘで育つ。主催するJahier Studioにて、ハワイの自然風景やそこに息づく生き物たちをモチーフに様々な作品を制作。ハワイの自然の素晴らしさや価値を伝えようと創作活動を続けている。


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クロエがデザインした、オヒアレフアの花のピン。バッグや服などに付けて楽しめる © Jahier Studio


ハワイのアートでは鮮やかな原色が目立つように感じますが、クロエが好む色はそれと少し違っていて、それが彼女の作品の魅力のひとつだと思います。


そんな色使いに関する質問からインタビューは始まりました。


ハワイの大自然の色彩を映し出すクロエの作品


アロハ・セイルズ ハワイ(以下、アロハ):

今日はよろしく。個人的な意見なんだけど、あなたの作品の色が大好きなんだ。カラフルでありながら決して派手ではない、みずみずしい美しさがあると思う。特にピンの作品を見てそう感じるのだけれど、使う色はどうやって決めているの?


Mānoa Valley Post Stamp Pin © Jahier Studio

ホノルルの北側にある、旅行客にも人気のローカルタウン・マノア。そのマノアの渓谷の風景をデザインした切手スタイルのピン


クロエ・セラーク(以下、クロエ):

ピンの色はハワイの大地、空、海にインスパイアされたものなの。ハワイは生命力にあふれた場所だけど、そのエネルギーや空気感を色を通して表現しようと努めているわ。ピンに限らず作品のために選ぶ色は、ハワイの自然世界を映し出すものなのよ。しっかりと観察することで、ハワイの風景が醸し出すフィーリングを捉えられたらいいと思っているわ。


慌ただしさの中でわたしたちが忘れがちな大切なもの


アロハ:

あなたが作るピンには幾つもバリエーションがあるけれど、中でも、切手をかたどったデザインのピンは、他には見られない独自のアイテムだと思う。この切手のピンのアイデアはいつ、どのように生まれたものなの?


クロエ:

新型コロナウイルスの影響で全世界がロックダウンしたパンデミックの初めの頃、他の多くの人と同じようにわたし自身も孤独感を味わったの。そんなわたしが大切な人たちと繋がるために選んだ方法のひとつが手紙を書き、Eメールを送ることだった。


いまの時代、あえて紙に向かってペンを手に取り、直筆で手紙を書くことは、ゆったりと腰を落ち着けてひとつひとつの言葉を選び、その言葉を駆使して自分自身を表現する素晴らしい機会だと思う。


アロハ:

あなたにとっては、人が互いにきちんと向き合い、時間をかけて丁寧に関係を築くことを象徴するものが「切手」そして「手紙」なわけだね。


クロエ:

そして、これまで何年もの間、わたしが作品づくりのメインテーマにしているのが、故郷 ―わたしの場合、それがハワイなのだけれど―を懐かしく想う気持ちなのね。


だから、わたしが初めて作った切手のピンには、自分が育ったハワイのオアフ島の東海岸にある町カネオヘの郵便番号「96744」が刻まれているの。


Kāne'ohe Post Stamp Pin © Jahier Studio

クロエが育った町カネオヘの雄大な山の風景を描いた切手のピン


そして、わたしを含めたハワイの人たちは皆、自分たちのホームタウンを誇りに感じ、とても大切にしているわ。


当時カネオヘの郵便番号入りのピンを発表したらたくさんの人が連絡をくれて、「自分たちの町の郵便番号入りのピンもぜひ作ってほしい」というリクエストが寄せられたのよ。そんなびっくりするくらい多くの励ましとサポートがあって切手のピンのデザインのバリエーションが今のように増えていったわけ。


それと、ピンというものは高さがせいぜい1インチ(2.54㎝)ととても小さいから、細かなあれこれを複雑に盛り込んだデザインが難しいの。でも切手の形式のピンなら植物や動物を風景と組み合わせ、よりたくさんのディテイルやニュアンスを込めたデザインが可能になるのよ。


アロハ:

なるほど、そういう現実的な事情もあったんだね。


ハワイの自然と人々の関係性の再構築を目指して


Lē'ahi / Diamond Head Post Stamp Pin © Jahier Studio

ハワイを象徴する風景のひとつ、ダイヤモンドヘッドがデザインされたピン。海にはハワイ固有種のアザラシ、ハワイアンモンクシールが泳いでいる 


アロハ:

切手のピンについての質問がもうひとつあるのだけれど。


クロエ:

どうぞ、なんでも聞いて。


アロハ:

ありがとう。先ほどの言葉にも少しあったように、あなたの切手のピンには陸と海、生き物たち、空や天体など複数のモチーフが組み合わされて描かれているよね。実際の郵便切手には花なら花だけ、鳥なら鳥だけいうようにひとつのモチーフのみが描かれることが少なくないけれど、あなたがピンの切手に複数のモチーフを描くのに何か理由があるの?


クロエ:

そうね…。それはわたしが、その場所の(全体的な)“フィーリング”を捉えてピンの中に表現したいからだと思うわ。それと教育的な側面を持たせたいと考えているからだと思う。


アロハ:

教育的な側面?


クロエ:

ええ。例えばなんだけれど、わたしが風景と組み合わせて取り上げる動物たちは、その土地で生息していることはもちろんだけど、(人間による)保護を必要している場合があるのね。そして動物に限らず、近年また歴史的にその一帯で豊富に生育している植物にスポットを当てることもあるわ。


そうすることで、その土地で続けられている動植物の保護活動に対するみんなの意識レベルを作品を通して高めていかれたらいいと考えているの。


アロハ:

なるほど。


クロエ:

実は他にも切手のピンでは大切にしていることがあって、それは太陽が正しい方角から光を放っているようにデザインをすることなの。


Ka‘ōhao / Kailua Stamp Pin © Jahier Studio

数々の美しいビーチで知られる町カイルアの沖に浮かぶ双子の小島、それら島の間から立ち上る日の出を描いたピン


アロハ:

そうするのはなぜ?


クロエ:

ピンに描かれている実際の場所に立った時に、ピンの中の太陽と実際の空の本物の太陽の位置を同じにしたいの。


カイルアで撮影された日の出の様子


アロハ:

どうして、太陽の位置の正確さにこだわるの?


クロエ:

例えば、一日のある特定の時間に、その時点での太陽に位置によって、山々には固有の影がかかるでしょう?

そういう細かな点がきちんと再現されていれば、その場所を知っている人がピンを見た時に描かれた風景により親近感が湧くと思うのね。

そして、この親近感こそが、ある特定の場所に対する懐かしさを呼び覚ますことに深く関係していると考えているからなの。


わたしの切手のピンが、人々とピンに描かれた場所とを何らかの形でしっかり結び付けてくれるたならとてもうれしいわ。


心から望むアート活動ができた刺繍の制作


Lo'i Kalo & Mahina © Jahier Studio

ハワイで昔から食べられてきた作物であるタロイモと月をデザインした手刺繍の作品


アロハ:

切手のピンと同じくらいユニークだと思うのが、あなたの「Hand Embroidery(手刺繍)」の作品だと思う。刺繍の制作を始めたのはいつ、どんな経緯からだったの?


クロエ:

刺繍アーティストとして活動を始めたのは2016年。当時わたしはカナダのバンクーバーにあるEmily Carr University of Art and Dersign(エミリー・カー芸術デザイン大学)で絵画の学位を取って、卒業したばかりだった。


その頃わたしは絵画以外の新しい表現を模索したいと考えていたの。細部への慎重なこだわりが不可欠で、精神を一心に集中させてくれるような、本質的にゆったりスローな何かに取り組みたいと考えていたのね。


わたしたちが生きている世界はこんなにもハイペースで動いているけれど、その時のわたしは意識的にペースダウンがしたかったし、サステナビリティ(持続可能性)やマインドフルネス(いま起きていることに意識を集中しているこころの状態)といったテーマを表現できるハンドメイドな作品づくりをより大切にしたかった。


手刺繍をしていると、わたしが大きな価値があると感じる「いまこの瞬間に自らが経験していること」に自分自身がしっかり根を下ろすことができるの。こころを静かに落ち着かせて‟いま”に集中できるのよ。


無数のとても細かな縫い目を作っていった結果、生地から風景が立ち現れるのを目にするといつでも、クリエイティブな満足感をかんじられるのよ。


Hōkūleʻa following Hōkūleʻa © Jahier Studio

ハワイの伝統的な航海術を使って世界各地を航海し、環境保護や文化伝承の大切さを伝える活動を続けているカヌー船「ホクレア号」がモチーフになった刺繍


アロハ:

あなた刺繍の作品には、ピンとはまた一味違う、静けさや深みが感じられて、自然と見入ってしまうよ。


刺繍がひとつ完成するまでにはかなりの時間と労力が必要だと思うけれど、その全ての工程を自分ひとりでこなしているわけだよね?


クロエ:

もちろん!原画デザインの考案から、刺繍用の木枠の準備、実際の刺繍の作業まで全部担当しているわ。わたしはアーティストであると同時にスモールビジネスのオーナーでもあるから、クリエイティブな面はもちろん、完成作品の写真撮影、お客様への発送作業まで、ウェブサイト運営からSNS投稿まで全てを自分独りで回す必要があるのよ。


本物の‟ハワイ”を掘り起こし、次世代に引き継いでいくために


Kahakai Bandana © Jahier Studio

ハワイの海沿いの自然(動植物)を、クロエらしいすっきり洗練されたスタイルでデザインしたバンダナ


アロハ:

さきほど少し話してくれたと思うけれど、刺繍やピンを含めた自分のアート作品を通じて実現できたらいいなと思うことはある?


クロエ:

そうね…。究極のことをいえば、ハワイの自然の多様性や地元の自然界が必要としていることと人々を結びつけるような仕事がしたいと思っているわ。


いまハワイでは、大地や海、植物や動物、虫たち、人間までもの健康が多くの要因によって危機に瀕していると思うの。


自分の作品を通して、ハワイの自然の素晴らしさを伝え、さまざまな問題を含めてスポットを当てることで、わたしは、ハワイに生まれ、あるいはハワイで育った人間が大切にしているこの場所(ハワイ)をただ単に表現し、賞賛したいわけではないの。

「ハワイの土地や生き物本来の名前を知り、親しもう」と提唱することでハワイの手助けがしたいと考えているのね。


言葉や(言葉で)表現された名前のようなものには大きなパワーがあって、たとえば一つの言葉や名前を知ると、またもう一つ別の新しい言葉や名前を知ることに繋がっていくと思う。


ハワイという場所は本当に長過ぎるくらい長い間、その多様性や本来の生態系を正確に反映していないパイナップルのようなもの(もともとハワイにあったわけではなく、外部の世界から持ち込まれたもの)によってシンボリックに表現され続けてきた歴史があるのね。


その一方で、今後もしっかりと存続し、繁栄していくべきだとわたしが考えているハワイ固有の動植物や場所には、それぞれ本来の(古くから受け継がれてきた)名前を持っている。


誰にでも親しみやすく、オリジナリティがあるアート作品やプロダクトをつくることで、それらの名前を当たり前のものにしていく手伝いがわたしには出来るはずだと考えているの。


アロハ:

あなたのブランド「Jahier Studio」のウェブサイトで販売されている各商品のページに、モチーフとなった場所や生き物たちのハワイ語の名前とともに、それらについての詳しい説明が書かれているのはそういった理由からだったんだね。


これからもこのような活動をぜひ続けていってほしいと願うけれど、最後に、最近のプロジェクトについて教えてもらっていい?


クロエ:

最新作としては、ハワイ沿岸特有の固有種の植物を描いた6種類のノートカードとポストカードのセットを発売したばかりよ。


Native Coastal Plant Notecards, Set of 6 © Jahier Studio

'Ohai、Pāʻū o Hiʻiaka、Ma'o、Pōhinahina、'Ilima、Naupaka Kahakai という6種の植物を描いた最新作のノートカード


この新しいプロダクトを目にしたり手に取ってくれた人たちが、描かれている植物への親しみを増してくれたらうれしいわ。そして、彼らが実際にハワイの海辺で過ごした時に、これらの素晴らしい草花自体と、それらが担っている生態系での役割を理解し、その価値を認めてくれたら、と願っているの。


アロハ:

植物たちの優美な姿はもちろんだけど、余白のあちこちに描かれた黄色いスパークルも、とてもいい感じだね。


今日は突っ込んだ質問を立て続けにしてしまったけれど、そのひとつひとつにとても丁寧に答えてくれて本当にありがとう。


クロエ:

こちらこそ、このようなインタビューの機会をどうもありがとう。


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クロエが描き出すハワイの自然の美しさ。幼少期からずっと、彼女のすぐそばに在り続けてきたハワイの大地、海、空、生き物に対してクロエ自身が抱く深い愛情と、彼女の確かな観察眼また高い表現力があってこそのものだと思います。


そしてこのことは、アートに限らず、人間が作り出すあらゆるものの魅力の有無を決める重要な鍵なのではないか、と感じたインタビューでした。



































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